相続とは、人が亡くなった際に、その人が生前に所有していた財産を、法律に基づいて家族など一定の人に引き継ぐ制度のことです。相続制度は、私有財産制度を採用する社会において、財産の所有者が死亡した場合に、その財産を誰がどのように引き継ぐかを定めるものであり、本人の意思の尊重と家族の生活の安定を図ることを目的としています。
相続が開始されるのは、財産の所有者が亡くなった時点からです。相続人は、民法の規定により、子、父母、兄弟姉妹の順で定められています。配偶者は常に相続人となります。これらの相続人は、法定相続分と呼ばれる一定の割合で遺産を受け取る権利があります。ただし、被相続人が生前に遺言を残していた場合は、遺言の内容が優先されます。
相続財産には、不動産、預貯金、株式、債権など、被相続人が所有していたすべての財産が含まれます。一方で、借金などの債務も相続の対象となります。相続人は、原則として相続財産を受け取ると同時に、被相続人の債務も引き継ぐことになります。
相続手続きには、大きく分けて次のような流れがあります。
① 相続人の確定
② 遺産の調査と評価
③ 遺産分割協議
④ 相続登記や名義変更等の手続き
⑤ 相続税の申告と納税
遺産分割協議とは、相続人同士で話し合いを行い、誰がどの財産を取得するかを決めることです。協議が整わない場合は、家庭裁判所に調停や審判を申し立てることができます。
相続税は、相続や遺贈によって財産を取得した場合に課税される税金です。相続財産の総額が一定の金額を超える場合に、超えた部分に対して税金が課されます。税率は、承継した財産の金額によって異なります。
相続は、亡くなった方の財産を引き継ぐ重要な制度ですが、同時に、残された家族の生活を守り、円滑に財産を承継するための手段でもあります。相続制度を理解し、適切に手続きを行うことで、トラブルを防ぎ、安心して新しい生活をスタートすることができます。