香典は相続財産には含まれません。香典は、故人に対する弔慰の意を表すために、香典を贈った人から遺族に直接贈与されるお金だからです。したがって、香典は贈与者から受贈者である遺族への贈与となります。
法的観点からは、以下のようになります。
1.香典は、民法上の贈与に該当します(民法第549条)。
香典を受け取るのは、通常、喪主です。喪主は、配偶者、子、父母、孫、祖父母などの近親者が務めることが一般的です。
2.香典は、贈与者からに喪主に直接贈与されるため、相続財産とは区別されます。相続財産は、被相続人(故人)が生前に所有していた財産を指します(民法第896条)。
3.香典は、相続財産ではないので遺産分割の対象とはなりません。もっとも、相続人全員が同意すれば、遺産分割の対象に含めることも可能です。
4.香典には葬儀費用など遺族の経済的負担の軽減の趣旨も含まれています。香典が葬儀費用に充てられることは、その趣旨から当然と考えられており、香典返しに充てた残額を葬儀費用にあてることになります。それでもなお剰余が生じた場合、誰が取得できるか問題となります。これについて、喪主が取得するとする見解(判例・通説)や、相続人が取得するとする見解があります。