1.遺言の意義とメリット
遺言とは、本人の財産に関する最終意思を言います。遺言を書くことによって、誰にどのような財産を遺すか決めておくことができます。
遺言には数々のメリットがありますが、最大のメリットは、財産の分け方をあらかじめ決めておくことにより、親族間の争いを避けることができる点にあります。
民法には法定相続分という決まりがあり、例えば配偶者に1/2、子2人に1/4ずつ、といった形で各自の取り分の目安が決まっています。しかし、具体的にどの財産をだれが取得するのか、ということは相続人同士で話し合って決めなくてはなりません。この話し合いを遺産分割協議と呼びますが、ここで互いのエゴがぶつかり合って争いに発展してしまう、ということが頻繁に発生します。
その点、遺言で財産の分け方を全て決めておけば、遺産分割協議は不要となり、争いの起る可能性を相当程度下げることができるのです。
2.遺言の方式
遺言には、①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3つの方式がありますが、通常は①自筆証書遺言か、②公正証書遺言のどちらかの方式によることになります。自筆証書遺言は、遺言の全文を本人が手書きして(財産目録を除く)、署名・押印する方式です。一方、②公正証書遺言は本人の意思に従って公証人が遺言を作成します。
自筆証書遺言は、いつでも、無料で作成することができますが、その反面、財産目録以外は全て手書きしなければなりませんので、高齢者にはかなりの負担になります。また、書き方を間違えると無効になるリスクもあります。
公正証書遺言は、作成を公証人が行ってくれますのではるかに負担が少ないうえ、書き方を間違えて無効になることも避けられます。また、公証役場で原本を保管するため、せっかく作成した遺言が紛失したり、誰かが勝手に手を加えたりすることも防げます。ただし、数万円から数十万円程度の手数料が掛かります。
どちらの方式がよいかは、遺言を作成する理由やご本人の健康状態、経済状態によるので一概には言えませんが、あえて雑駁な言い方をするなら、よりコストが安いのが自筆証書遺言でより確実性が高いのが公正証書遺言と言ってよいでしょう。