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自筆証書遺言の書き方 その3


付言事項について

 遺言で定めることのできる事項は法律で決まっています。これを法定遺言事項といい、14種類あります。これ以外の事項について遺言に記載しても、法的な効力が認められません。

 

 しかし、あえて法定遺言事項以外の事柄を遺言書に記載する場合があり、こちらは付言事項と呼ばれます。付言事項で多いのは、遺言者の希望や、家族への感謝などです。

 

 付言は、残された者たちに遺言者の気持ちを伝えると同時に、紛争を未然に防止する効果が期待できます。たとえば、AとB、2人の子のうち、Aのみに財産を遺す場合を考えてみましょう。生前にBが了解していたら別ですが、何ももらえなかったBは、少なからず不満を感じてもおかしくありません。遺言者に愛されていなかったのではないか、という疑念を抱え苦しむ可能性もあります。

 

 たとえ遺言で取り分なしと定めたとしても、Bには遺留分という権利がありますから、Aに対して一定額の金銭請求を行い、Aが応じなければ訴訟を提起することも考えられます。自らの死後にAとBが争うのは、遺言者の望むところではないでしょう。

 

 ここで、例えば、「ふたりの子に対する愛情に違いはないが、Aは経済的に厳しい状況にあるのでAに私の財産を遺すことにした。Bには誠に申し訳ないが、どうか私の気持ちを尊重してほしい。今後とも兄弟仲良く元気に暮らしてくれることを祈っている。」といった付言があれば、Bがこの遺言に対して受ける印象は大きく異なるでしょう。

 

 付言としてどのようなことを記載するかは遺言者の自由ですが、将来の紛争の火種になりかねないような内容を書くことはお勧めできません。上記の例で、「Aは私の面倒を見てくれたが、Bはろくに顔も出さず親不孝をしたので財産はAに遺す。」といったような付言を書いてしまうと、Bは不快や不満に思い、その感情の矛先をAに向けることも考えられます。遺言者としては、これまでの不満や怒りを書きたくなることもあるでしょうが、親族間の紛争防止の観点からは、そうした気持ちを押さえてポジティブなメッセージを残した方が効果的です。

 

 付言事項は遺言書の末尾に記載されるのが普通です。体裁につきましては、以下の見本を参考にしてください。



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