1.自筆証書遺言保管制度とは
自筆証書遺言(自分で手書きで作成した遺言)の最大のデメリットは、その保管にあります。自宅に保管しておく場合、火事や地震で滅失してしまったり、遺言者が亡くなった後、発見されないままになったりするかもしれません。また、発見者による改ざんや破棄の恐れもあります。
このような自筆証書遺言の弱点に対する解決策として、令和2年、「自筆証書遺言保管制度」が導入され、遺言を自宅で保管する代わりに、法務局で保管してもらえるようになりました。
【自筆証書遺言保管制度のメリット】
・滅失や改ざんのリスクが極めて小さい。
・死亡時通知制度により、遺言者が死亡したとき指定した者に遺言の存在を通知できる。
・家庭裁判所の検認手続が不要。
・手数料が1件につき3,900円と安価。
【自筆証書遺言保管制度のデメリット】
・遺言者本人が法務局に遺言を持参する必要がある。
・遺言書の仕様について細かい決まりがある。
2.手続の流れと注意点
① 自筆証書遺言を作成する。
② 申請書を作成し、添付書類を準備する。
③ 保管の申請の予約をする。
④ 保管の申請をする。
⑤ 保管証を受け取る。
(1)自筆証書遺言を作成する
・用紙はA4サイズを用いる。
・余白を確保する(上5mm以上、下10mm以上、左20mm以上、右5mm以上)。
・片面のみを使用し、裏面には何も記載しない。契印も不要。
・ホチキス止めをせず、バラバラのままで持参する。
・その他、自筆証書遺言の作成上のルールを順守する。
(2)申請書を作成し、添付書類を準備する
・申請書は法務省HPからダウンロードするか、法務局(遺言書保管所)窓口で入手する。
・申請書に必要事項を記入する。
・添付書類として、「本籍」と「戸籍の筆頭者」の記載のある住民票の写しを取得する。
(マイナンバーや住民票コードの記載のないもの。作成後3か月以内。)
(3)保管の申請の予約をする
・保管の申請ができるのは、以下の法務局(遺言書保管所)
遺言者の住所地/本籍地/所有する不動産の所在地
・専用HPまたは電話か窓口で予約する。
ア)法務局手続案内予約サービスHPから予約ページへ
https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/
イ)法務局(遺言書保管所)への電話による予約
手続きを行う予定の法務局に電話して予約する。
ウ)法務局(遺言書保管所)窓口での予約
手続きを行う予定の各法務局の窓口で直接申し込む。
(4)保管の申請をする
次のアからオまでのものを持参して、予約した日時に遺言者本人が、法務局に赴く。
① 遺言書
② 申請書
③ 添付書類
④ 顔写真付きの官公署から発行された身分証明書
(マイナンバーカード/運転免許証/運転経歴証明書/旅券 等)
⑤ 手数料(1通につき3,900円)
(5)保管証を受け取る
手続終了後、保管番号が記載された保管証を交付されるので、大切に保管する。